2009.12.19

「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」

 二日連続になりますが、どうしても見たい映画が間もなく終了になるようだったので、夕方から池袋のミニシアター系映画館に出向いて鑑賞してきました。小池 徹平が主演の「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」です。
 実話をベースにした作品で、過酷な労働を強いられるIT業界の下請け会社に入った元ニートの主人公が、周りの人間との間に繰り広げられる戦闘(!)で成長して行く物語です。その中で「何のために働くのか」という問いを突きつけられる主人公。彼は果たして変わることができるのか...?


コメディ調ですけど、実はテーマは深いです。

 なかなか面白い作品でした。全体に流れるのはコメディ調なのですが、実は「何のために働くのか」という問いを観客に突きつける内容になっています。終盤、主人公が周囲に発する言葉は非常に印象的でした。私の場合、学生時の研究室時代がかなりハードだったので、感情移入もできたました...。
 万人向けではありませんが、一度観てみるだけの価値はあります。

2009.12.18

筋を通すことの功罪「沈まぬ太陽」

 前回映画を観に行ってから、ずいぶん時間が経ってしまいました。その間にも見たい作品はいくつかあったのですが、ツーリングに行ったり出掛ける気力を無くしたりして見逃してしまった作品もありました。ただ、どうしても見ておきたかった作品が渡辺 謙主演の邦画大作「沈まぬ太陽」です。
 原作は山崎豊子氏の小説。ナショナル・フラッグ・キャリアの航空会社に勤務する主人公・恩地が、労働争議の先頭に立ったが故に僻地の海外勤務に回されます。8年後、ようやく日本に戻ると今度は墜落事故が発生。再生を求められた会社の危機に飲み込まれて行く姿を描いた作品です。一方でエリートコースを歩み、徐々に暗闇に蝕まれて行くかっての同僚・行天との対比が筋を通すことの功罪を示していました。


長尺3時間22分の大作でしたが、時間を忘れて鑑賞しました。

 誰が何と言ってもモデルはJAL。公開のタイミングが経営危機と重なったこともあって、配給会社に申し入れを行ったそうですが、なるほどそれも頷ける。フィクションというにはちょっと表現がキツすぎるようですね。また、非常に豪華な配役になっているのにも注目。たった一瞬の登場であっても名の知れた俳優が演じていることに驚きました。
 3時間22分という長編でしたが、あっという間に時間が過ぎ去ってしまったという印象です。観た感想としては「筋を通すのは難しい」ということ。恩地の行動は決して間違ってはいないのでしょうが、「最善な策なのか」というと行天の行動にもちょっと肩を持ちたいところもあって、複雑な気持ちがしました。とてもハッピーエンドとは言えないような終わり方ですが、きっと彼は大きな誇りを持って残りの会社人生を生きて行くのでしょう。野望だけではなく、彼のような生き方がありうることも、忘れないようにしたいものです。

2009.09.09

本物の映像に感動した「宇宙へ。」

 仕事を終えてから映画を観に行ってきました。前々から見たいと思っていた作品ですが、調べてみると近所では今週末までしかやっていないことがわかったので、駆け込みで行ってきた次第。作品は有人宇宙飛行黎明期からの人類の宇宙への挑戦を、NASAの秘蔵映像で綴ったドキュメンタリー「宇宙へ。」です。アメリカ初の有人宇宙飛行の開始から、地球軌道を周回するジェミニ計画、月への着陸を目指したアポロ計画、そして記憶に新しいスペースシャトルの開発の記録が示されています。


作り物ではない、本物の迫力に圧倒されました。
(画像に触れると表示が変化します)

 ドキュメンタリーなので、その「本物」の映像の迫力はすばらしい。特に地球の成層圏のブルーがとても印象的でした。また挑戦の歴史は裏を返せば失敗の歴史。ロケットの爆発や事故などの出来事を交えることで、挑戦することの意義を強調したものになっています。特に事故発生の際のオペレーション・ルームの様子はとても生々しく、衝撃的ですらあります。
 これは、ある意味人類が「夢」に向けてチャレンジできていた時の記録といえるでしょう。夢に向かって努力することはこんなに素晴らしいのだということを、改めて認識することができました。機会があればぜひ劇場で鑑賞されることをお勧めします。
 さて、一番心に残った言葉は「この挑戦の意義を信じる」。チャレンジを忘れては決していい仕事はできないということを改めて思い出させてくれました。

2009.08.15

目が疲れてしまった「G.I.ジョー」

 午後から映画を1本見に行ってきました。作品は「G.I.ジョー」。アメリカのフィギュアから生まれた歴史の長い作品を、最新のSFXで実写化したものです。新型兵器をめぐり悪の組織「コブラ」と、国際機密組織「G.I.ジョー」が激突するアクション大作ですが、どうやらこれは始まりに過ぎない予感...。


あまりにもめまぐるしくて疲れました...。

 ストーリー展開は特に説明するほどのこともないでしょう。そんなことより市街地で繰り広げられるチェイスシーンや、敵基地での壮絶なバトルなどめまぐるしいばかりのど派手なアクションに驚かされました。ただ、あまりにスピードが速すぎて何が起こっているんだかまるでわからないほど(苦笑)。また、映画としてはもうちょっと人物の掘り下げをやった方がよかったのではないかなとも思えました。主人公の苦悩があっさりしすぎてるような気が...。
 アナクロな日本の描写など突っ込みどころも多々ありますが、まぁ「画面を眺める」つもりで行けば悪くないかも。

2009.07.28

期待以上の出来だと思った。「アマルフィ 女神の報酬」

 天候不順につき出かけられなかったので、午後から映画を観に出かけました。作品は「アマルフィ 女神の報酬」。フジテレビ開局50周年記念作品ということで、全編イタリアロケの本格ミステリーとの触れ込み。予告編では美しいイタリアの風景が描かれていたので、ぜひ観ておこうと思っていました。
 ストーリーはサミット前夜、邦人誘拐事件に巻き込まれた外交官の活躍を描きます。これが洋画なら派手な撃ち合いやらアクションが見せ場になるのでしょうが、これはあくまで頭脳戦。誘拐事件の裏にあるものとは、一体何か?


テレビの延長線上かと思いきや、期待以上の出来でした。

 感想ですが、思っていた以上の出来でした。テレビ局の開局記念作品ということであまり期待していなかったのが正直なところではありますが、各所に張られた伏線や仕掛けが終局に向けて繋がって行くのがわかり、なかなか面白かった。終局への展開もよくできていて、クライマックスでは盛り上がりました。ミステリーを好む人は「甘い」と思うかもしれませんが、良心的なストーリーが却って好感を醸し出しました。
 ただし主人公だけの活躍が目立ちすぎたのも事実。大使館員にも豪華なキャストだったので、もう少し見せ場を作ってあげた方がよかったかもしれません。

2009.06.28

ちょっとピントが甘かった「三十九枚の年賀状」

 CBR1000RRが入院中なこともあって日曜日は特にすることもなし。そこで映画関連Webサイトで今やっている作品で面白そうなものはないか物色したところ、シネマート六本木で「三十九枚の年賀状」というミニシアター系作品をやっていることがわかったので、見てくることにしました。

 太平洋戦争末期の九州・宮崎。終戦直前に主人公の星ユリ枝は軍人の河村彰と知りあいます。口には出さないけれど、お互いに相手を強く意識する二人。そして終戦、彼女の元に河村からお礼の手紙が届き、それをきっかけに年賀状のやりとりが始まります。お互いに就職し、結婚。そして二十八年後、ユリ枝の母の死をきっかけに二人は再会することになり、昭和という時代を振り返ることに...。


何が描きたかったのかが今一つ不明確でした。

 話としてはとてもいいものがあるのですけど、映画としてはちょっと物足りなかった印象。戦時中の暮らしや自然、人々の生活が丁寧に描かれている一方で、本来のテーマの部分の描写が弱いのです。なぜ二人のやりとりが三十九年も続いたのか、その動機が上手く伝わってこなかったので余計に醒めてしまった。また、特別出演されている役者さんの起用といい、「いかにも企画物」という作りが、作品自体の品位を落としてしまっているような気がします。

 ところで、劇場で周りを見てみるとほとんど年配の方ばかりでした。こういうノスタルジーを感じさせる作品を見に来る自分がえらく「時代遅れ」に思えてしようがない一日でした(苦笑)。

2009.06.27

自然の美しさと厳しさが印象的だった「劒岳 点の記」

 映画月間7本目の作品は話題の作品「劒岳 点の記」です。原作は新田次郎の実話をベースにした小説で、それを映画カメラマンとして様々な作品を手がけた木村大作氏が映像化したのが本作です。様々なメディアで紹介されていますが、その魅力は「本物」の映像。現代ではCGなどで表現する部分も、実際に雪山で撮影を行うなど過酷な作業だったことが語られています。

 物語は明治末期、日本で唯一残った地図の空白地帯を埋めるため、陸軍測量部に所属する柴崎芳太郎に劒岳付近の測量命令が下るところから始まります。柴崎は地元の案内人、宇治長次郎とともに劒岳への道を探ります。一方でそれに先んじようとする日本山岳会との競争も発生。そしていよいよ年が明け測量がスタート。難峰とされる劒岳に、果たして三角点は設置できるのか...?


自然の美しさ・迫力に圧倒されます。ぜひ劇場で観るべきです。

 感想です。本物の自然の美しさ・迫力にすっかり圧倒されました。各所で映し出される山岳の美しさは、言葉では語ることができないほどです。日本にもこんな美しい景色があることを、改めて認識させられました。それだけでも見て損はありません。また登場人物がそれぞれに魅力的に描かれていて、物語的にも楽しめました。
 周囲の評価などはどうでもいいことで、実際に成し遂げた人だけが味わえる達成感というものがあるということを、この作品は教えてくれたような気がします。文句なしにお勧め。

2009.06.21

色々な観点で楽しめた「いけちゃんとぼく」

 映画月間(?)もついに5週目、今日見た作品は「いけちゃんとぼく」です。こちらも予告編で映画を知り、見たいと思った作品です。CFでは「泣ける」と評判ですがどうでしょうか。また、舞台が私の出身地・高知ということもあって、そういう面でも公開を楽しみにしていました。

 ストーリーは少年の成長物語です。いじめっ子や弱虫の同級生との間で、たくましく成長していく主人公。その側には、彼にしか見えない不思議な存在、「いけちゃん」がいつもついているのでした。


ストーリーはお決まりですが、嫌みではありません。懐かしい風景もたくさんでした。

 「泣ける」というのは大袈裟なような気もしますけど、作品の描写は緊張感あり、強さあり、弱さあり、最後はほろりとさせられます。ちょっと昔の物語っぽい雰囲気ですけど、子供の考えることが妙にシュールだったり、ハリウッド並み(?)のSFX効果があったりと現代的なところも散りばめられています。ストーリー展開には目新しいところはなく、ちょっと描き方が舌足らずでは?と思えるところもありますが、全体としては面白かった。また最小限の線で表現された「いけちゃん」の表情の作り方は一見の価値ありです。

 この作品の舞台となっているのは高知市の浦戸地区と思われますが、このあたりは私は何度も行ったことがあり、映った景色をとても懐かしく感じました。他にも宇佐大橋など馴染みの場所が出てきたので、そういう意味でもとても楽しめました。

2009.06.14

和製U-571は無惨だった...「真夏のオリオン」

 映画月間の第4週目、5本目の作品は玉木宏主演の「真夏のオリオン」です。年明け早々劇場で予告編を観て楽しみにしていたのです。しかし、原作や同じ種類の映画「ローレライ」の出来が芳しくなかったこともあって、ちょっぴり不安も...。

 ストーリーは太平洋戦争末期、沖縄に侵攻する敵輸送船団迎撃任務につく潜水艦「伊77」と、その船団を護衛するアメリカ海軍の駆逐艦「パージヴァル」の戦いを描いたものです。お互いの知略を尽くして闘う両者の戦いの決着はいかに...?


残念ながら、期待にはほど遠かった...。

 感想ですが、これはいただけない。映像的に無駄なCGを多用しなかった点は評価できますが、登場人物の戦う動機の描写が希薄なので「行動の必然性」がまるで感じられないのです。潜水艦映画に最も必要である「死と隣り合わせの緊張感」も乏しく、リアリティも感じられませんでした。メッセージ性も薄く、何を観客に訴えたいのかよくわかりません。また、作中で用いられる戦略は過去の映画「U-571」とほとんど同じで、これではまるでスケールダウン・リメイクです。正直、駄作と思います。

2009.06.06

名前負けしてない?「ウルトラミラクルラブストーリー」

 この週末も朝起きると雨。お出かけは見送り、掃除と洗濯を午前中に片付け、昼からはMOVIXさいたまへまたもや映画を観に行ってきました。首都圏では今日が初日です。観賞した作品は松山ケンイチ・麻生久美子主演の「ウルトラミラクルラブストーリー」です。あれ? そういえば先週から見た映画3本すべて彼女の出演作...? これじゃあ、映画月間じゃなくて麻生久美子週間ではないか(笑)。

 ストーリーは青森で農業をして暮らす青年が、東京からやってきた幼稚園の先生に恋をして、猛烈にアタックを開始します。彼女も少しづつ心を開いて...というのはお約束ですけど、この作品はここからがちょっと普通と違っていました。


この作品から何を読み取るべきなのか...私にはわからなかった。

 感想ですが、正直何を読み取ったらよかったのか、よくわかりませんでした。ストーリーは確かにウルトラミラクルなんですけど、だから何なの?という印象。松山ケンイチは頑張っていましたけどね...。正直名前負けしてるかな、この作品。

2009.06.03

全然テンション上がりませんのです...「インスタント沼」

 水曜日は仕事を早上がりし、その足で新宿まで出向きました。目的は映画「インスタント沼」の観賞です。下の画像では「全国劇場にて大ヒット上映中!」となってますが、一番近くで上映しているのが新宿だったということで...って、これは誇大広告じゃないの!? さて、Webで予告編を見たところ、なんだかシュールな雰囲気漂うコメディのようだったので、こんな作品もいいかと思って行ってきました...けどね。

 ストーリーは「ジリ貧OL」の主人公が、河童を捕まえに行って意識不明になった母親の秘密を知り、実の父親に会いに行く...というもの。なんですが、どう考えても上手く説明できそうにありません。なので思い切って割愛(!?)させていただきます。お断りしておきますが手抜きではありません。私には無理というだけです。


いい意味でも悪い意味でもB級映画です。

 キャストは豪華な顔ぶれで、いつも通りの芸風で出ている人もいれば、風間杜夫のようにキャラクターイメージを変えるような配役もありました。所々で笑いを誘う仕掛けがありましたが、ちょっと散発的だったかな。一貫したテーマが読めなかったので、私的にはあまり引き込まれることはなかったのですが、最後の展開はサプライズでした。主演の麻生久美子は先週見た「おと・な・り」とは打って変わってハイテンションな主人公を演じていますけど、ちょっと無理が見える(笑)。全く違う役柄をこなせるのはさすがですが、今回の作品は見ていて疲れてしまいました。

 結論、いい意味でも悪い意味でもB級映画でした。

2009.05.30

ほのぼのとした雰囲気に包まれた「おと・な・り」

 映画週間(?)の第2弾は今日から公開された「おと・な・り」です。以前に映画を観に行った時に流れた予告編を見て、是非見たいと思っていたのです。この日が初日だったのですが、天気も悪かったのでこの機を逃さず(?)観て来ました。

 内容は都内にある洋館風の古いアパートで、「おとなりさん」として暮らす青年と女性の物語。青年は有名なカメラマンですが、「やりたい仕事」と「求められる仕事」のギャップに悩みます。女性の方はフラワーアレンジのデザイナーとして夢を追い求める一方で、ちょっぴり孤独も感じている様子。二人はいつもニアミスで、直接顔を合わせたこともないのですが、そんな二人がお互いの生活の"音"を意識するようになり、やがて意外な展開を見せていきます。


この上半期で、一番楽しみにしていた作品です。

 感想ですが、私はいい作品だと思いました。シーンの描写は控えめなのですが、表情と"音"で心情が伝わってきます。ストーリーも意外な仕掛けが用意されていて、最後はハラハラドキドキ感まで味わえました。物語の中で二人が壁越しにコミュニケーションする場面(これは映画を是非観てください)は、まさに"粋"。本当の"優しさ"とはこうじゃないのかな。エンドロール直前のシーンは、この作品のテーマが前面に出されていて秀逸です。
 全体を見渡しても役者さんの配置もぴったりハマっていました。谷村美月は今までのイメージからはちょっと意外な役どころでしたけど、こんな役もできるんだと感心。でも、やっぱり主演である麻生久美子の「儚げだけど可憐」という存在感が際立って光っていたと思います。

 ほのぼのとした雰囲気に癒されました。観に行って良かった。こんな出会いがあれば面白いですね。


公開初日の特典でもらった大型ポストカードです。

2009.05.24

ラッセル・クロウの渋さが光る「消されたヘッドライン」

 この1ヶ月間は気になる作品の公開が目白押しです。その第1弾は新聞記者を主人公にした社会派サスペンス「消されたヘッドライン」です。主演はラッセル・クロウ、私が彼を初めて知ったのはかの名作「グラディエイター」。渋さのある重厚な役がよく似合う俳優さんです。今回は見てくれはあまりスマートではないものの、友情と信念の間で揺れつつも、真実に迫るベテラン新聞記者を演じています。

 ストーリーは民間軍事会社の陰謀を追求する旧友である議員の秘書が謎の死を迎えたところから始まります。一方で、街で発生した殺人事件がこの一件に徐々に結びつき、やがて隠された巨大な陰謀が明らかになってくる...というもの。


評判通りなかなか面白かった。お勧めです。

 ストーリーも緊迫感のあるスピーディーな展開で、すっかり見入ってしまいました。ラストのどんでん返しもよくできていて、なかなか面白かった。陰謀を暴くという王道的作品ではありますが、ありがちな善悪観点で描いていないところも意外性があり、斬新に感じます。ただ細かいことを言うと、主人公が「真実を追求する」という動機付けがやや弱かったので、友情と贖罪の間に揺れる心情が今一つ伝わってこなかったのが気になりました。

 最後にキーを押すことを譲った主人公の格好良さが、非常に印象に残りました。

2009.05.02

これといったテーマが見当たらない「レイン・フォール 雨の牙」

 午後から半月ぶりに映画に出かけました。作品は「レイン・フォール 雨の牙」。東京を舞台にUSBメモリーに隠された情報をめぐって、暗殺者とCIA、ヤクザ、警察が攻防を繰り広げる物語。見慣れた東京の街が舞台ということで、そのあたりも楽しみにしていました。

 さて、映画の方は残念ながらあまり面白いと思えませんでした。前半の話の展開がわかりにくかったのと、映画に込められたテーマがはっきり見えないのが致命的。「人物」を描きたいのか、「街」が主役なのか、それとも「陰謀」を描きたいのか全くメリハリがなかった。クライマックスらしい盛り上がりもなかったので、これならテレビの2時間ドラマの方がまだ楽しめるかも。

 結局「東京が牙をむく」といいつつも、舞台のスケール感が小さすぎるのです。役者はそれなりの顔ぶれなので、ギャラに製作費の大半を食われちゃったんですかね(苦笑)。


残念ですが期待外れとしか言いようのない出来でした。

 逆に言うと、かの名作「ブラック・レイン」がいかにすばらしい作品だったかを思い知ることにはなりました。

2009.04.12

控えめな演出が現実感を醸し出す「ザ・バンク 堕ちた巨像」

 前日に洗濯も済ませておいたので、日曜は特にすることもなし。そこで昼から映画を観に出かけました。今日の作品は「ザ・バンク 堕ちた巨像」、金融サスペンスものです。昨秋からの金融危機もあり、時世にぴったり合ったテーマになっています。Webで評判を調べてみても、それほど厳しい批評は見当たらなかったので見に行くことにしました。

 ストーリーは世界第5位の規模を誇る銀行の不正(マネーロンダリング、武器仲介、暗殺)を、インターポール捜査官とニューヨーク検事局の検事が暴こうというもの。手がかりや証人が現れるたびに、銀行側が先回りして関係者を消していくという展開です。原題「The International」の通りベルリン、リヨン、ミラノ、ニューヨークと舞台は転々とし、イスタンブールで対決の時がやってきます。


全編、緊張感溢れるスリリングな展開でした。硬派な映画です。

 全編にわたり、緊張感があふれてスリリングな展開でストーリーにぐいぐい引き込まれました。派手なアクションが前面に押し出されていない分だけ、同じ陰謀物の映画よりも現実感が残っています。ただし、追いつめられる銀行側の陰謀の描写が少し物足りないので「巨悪」という印象が薄いのが難点です。終局も爽快感のない終わり方だったので、ちょっと不満が残りました。

 ちなみに、この話には実在のモデルがあるそうです。それだけでも驚くべきことですけど、銀行が「社会を下支えする」という本来の役割を見失い、ただの営利企業に成り果ててしまった現代の一面を描写したことに、この作品の真の価値はあるのかもしれません。

2009.04.03

ちょっと行動の動機が弱い「ワルキューレ」

 1ヶ月ぶりに有休を取ったので、午後は映画を観に行きました。久しぶりに洋画を選びました。トム・クルーズ主演「ワルキューレ」です。ストーリーは第2次世界大戦末期、ドイツ内部のヒトラー暗殺計画を描いたもので、実話を元にした作品です。アフリカ戦線で傷ついたシュタウフェンベルク大佐は、祖国に尽くすのか指導者に尽くすのかを迫られます。そして自らの意思で最高指導者の排除を企てる主人公。ついに計画を実行するのですが...果たして、クーデターは成功するのか?


もう少し苦悩を表面に出した方がよかったのでは?

 実話ベースなだけに、予想もしない結末は待ってはいません。映画の造りそのものも、話題作のわりにはあんまりお金もかかっていないような感じでした。しかし、作戦決行時や情報をめぐって判断を迫られる緊張感はひしひしと伝わってきました。特に音響の効果が大きいので、この作品は劇場で観た方がいいと思います。ただ、主人公がクーデター計画に引き込まれていく部分での苦悩(部下や家族の存在)の描き方が弱いので、暗殺に賭ける動機が今一つ強く見えないのがちょっと気になりました。

 主人公は総統の前では義眼、その他ではアイパッチを使っていました。それだけでも随分印象が違って見えるんですね...。

2009.03.14

期待外れだった「パラレル」

 最近、あまり大々的に宣伝されない比較的マイナーな邦画ばかりに走っています。土曜日は午前中天気が荒れ模様だったので、掃除や洗濯をこの間に済ませてしまいました。午後から出かけるといっても、なかなか雲も取れないし...ということで、Webで上映中の映画を探してみました。すると、新宿で今日から「パラレル」が封切られているそうなので、暇つぶしに見てくることに。

 ストーリーはサッカー選手である主人公が結婚式の前日に事故に遭い、下半身不随になってしまうところから始まります。二度とサッカーができないことを知った彼は将来に絶望しますが、婚約者の献身的な助けで立ち直り、やがて車椅子バスケットに転向して再びアスリートとして歩み始めるというもの。これは、実話をベースにした話だそうです。


正直、映画としての出来は今一つ。描写が足りなさすぎ。

 さて、私はめったなことでは批判的なコメントを書かないようにしているのですが、今回はちょっと辛口評価です。ストーリーは申し訳ないですが「ありがち」なので、あとは映画としてはどれだけ説得力のある映像にできるかだと思います。ところが、この作品はその点で多いに物足りません。特にヒロインが彼を想う心がストーリーの上でよく表現できていない(演技力という話ではなく)ため、ただ話が淡々と進んでいるだけのように思えてしまいました。クライマックス後の部分を端折りすぎたのもかなりマイナスです。

 話自体はいいだけに、もう少し演出含めて映画ならではの表現が欲しかったところです。

2009.03.06

優しい気持ちになれる「カフーを待ちわびて」

 仕事を15時(!)に切り上げて、映画を観に行きました。今回は川越のちょっと向こうにある「シネプレックスわかば」まで。理由は見たい作品が近場でなかったためです。見に行ったのは「カフーを待ちわびて」。第1回日本ラブストーリー大賞作品の映画化だそうです。ただし、映画の結末はオリジナルとのこと。

 ストーリーです。沖繩の離島で静かに暮らす青年の元に、一人の女性が訪ねてきます。彼女は「絵馬を見て来ました。今日からよろしくお願いします」と語り、いきなり一緒に暮らし始めます。実は、青年が以前訪れた神社に「嫁に来ないか、幸せにします」と書いた絵馬を納めていたのに対して返事...というか、本人が来たのです。思いもかけない話に戸惑う青年ですが、彼女との触れ合いの中で、少しずつ変わっていくのでした。


舞台が狭いだけに、人の触れ合いが丁寧に描かれていて、よかった。

 タイトルにもある「カフー」の意味はぜひ映画を観て知った方がいいでしょう。主人公演じる玉山鉄二は、暗い過去を持つ優しい青年を好演。緊張やドキドキ感、悲しみ、怒りが上手く出ていました。相手役のマイコは飛び抜けた美人という雰囲気ではありませんが、素朴な笑顔がとても素敵な女優さんでした。二人の会話はとても静かで他愛もない話題なのですが、「心が通いつつある」というのが美しく表現されていたように思います。

 エンドロールの前、ラストの主人公の言葉はいろいろな想いが詰まった名言です。この作品も個人的に「当たり」でした。

2009.02.27

原作の雰囲気を見事に再現した「天国はまだ遠く」

 最近読んだ本でとても気になったのが瀬尾まいこ「天国はまだ遠く」。昨年11月に映画が公開されていましたが、首都圏ではすべて上映終了しており見逃してしまっていました。ところがさらに調べてみると、新潟県十日町市にある映画館で2月末まで上映していることが判明。乗換案内でルート検索すると片道2時間半で行けそう。ちょうど仕事の狭間で有休が取れたこと、3ヶ月も埼玉・東京から出ていないこともあり、気分転換も兼ねて見に行ってきました。

 ストーリーは「Books」の方で述べているので詳しく書きませんが、結論から言うと原作の雰囲気を見事に再現した、いい映画でした。出演者の名前を見るとお笑い関係の人が多いこともあり、正直なところ多少不安はあったのですが、完全に杞憂でした。主人公を演じる加藤ローサはダメダメ娘の味を出せているし、相手役の徳井義実も原作のイメージとはちょっとずれているものの、民宿の青年にぴったりハマっていました。ストーリーの面でも原作のエピソードの一つ一つを丹念に描写しており、好感が持てました。さらに原作ではあまり触れられていなかった田村の過去と苦悩を描いたことで、作品としての奥行きもより深くなったようです。ただ、千鶴が「ここに私の居場所はない」と感じるきっかけが、今一つ不明確な感じを受けたのがちょっぴり残念かな。丹後地方の美しい風景も随所に折り込まれていて、素敵な雰囲気でした。


見に行って良かった。おすすめですが、原作を読んでから見た方がいいかも。

 最後のシーンは原作とはちょっとテイストが異なっていて、二人がすごくいい感じになっていました。両者とも言葉には出さないけど、思っていたことはきっと一緒ですよね。作品は「別れ」で幕を閉じましたが、私はきっとあの二人はいつの日か再会するのだろうと確信できました。未来に希望が持てるあの雰囲気、ちょっと羨ましいかな(笑)。ラストのエンディングへの入り方もとても自然でしたし、テーマ曲も歌詞を含めてこの映画にぴったりフィットしていました。

 映画1本見るのに2時間半移動というのは確かに遠かったけど、見に行ってよかったです。

2009.02.24

【番外編】DVD「スカイ・クロラ」

 今日は番外編です。昨年の夏に観に行った「スカイ・クロラ」のDVDがリリースされ、 自宅に届きました。全編に流れる"飛行感覚"がとても気に入っていたので、購入しておこうと思ったわけです。

 パソコンの24インチディスプレイで早速観賞。やっぱりスクリーンで見るのとは随分違います。音は映画館の方が迫力ありますけど、絵の濃密さはDVD版もなかなかです。映画では気づかなかったような細かい部分で、発見したことがたくさんありました。

 それにしても川井憲次氏の手による音楽は、本当に映像とのマッチングが最高です。 落ち着いた時間、寂しさ、緊張感と、すべてのシーンを印象的なものにしてくれています。ストーリーを云々しなくても、雰囲気に酔うことのできる作品です。

2009.02.06

痛快!「K-20 怪人二十面相・伝」

 続けて2本目は「K-20 怪人二十面相・伝」です。第二次世界大戦が回避され、華族制度が残ったことで格差社会が根付いてしまった"もう一つの日本"。そこで怪盗として世間を騒がす「怪人二十面相」に罠にはめられてしまったサーカス団の青年。彼が濡れ衣を晴らそうと奮闘する痛快活劇です。

 見どころは色々ありますが、細かいところまで描かれた帝都の街並みは圧巻。ストーリーもテンポよく進み、無駄な仕掛けがないので素直に楽しめます。役者さんも名バイブレーヤーを要所に配置して、所々に散りばめられたシャレの効いたやりとりは見ていて楽しかった。最後のどんでん返しもよくできていて「観て良かった」と思える作品でした。最後はちょっと「ご都合主義」が入ってましたけど、まあ許せる範囲でしょう。


観るだけの価値はあります。楽しめます。

 「日本映画だって、こういうジャンルでも結構できるじゃないか」と思いました。続編も期待してます。

2009.02.06

パニック・シミュレーション「感染列島」

 妻夫木 聡・壇 れい主演の「感染列島」を観てきました。この映画、未知のウィルスがもし日本に持ち込まれたら...という事態を描いたパニック巨篇です。何もわからずに、バタバタと人が倒れていく。それを助けようとする人たちにも...。こういうことは現実には起きないで欲しいものです。

 テレビで主演の役者さん達が「マスクやゴーグルをつけての演技しなければならなかったので、"眼力"を出せるように」と語っていましたが、確かに緊張感と迫力が伝わってきました。"金麦"でおなじみの壇さんも熱演。ウィルスに立ち向かい、時には非情な決断を下すエリート医師を演じていますが、その裏側の"弱さ"との対比が強烈な印象を残してくれます。

 ただし、無人と化した東京・銀座の街並みと役者の合成に違和感があって「いかにも作り物の現実」が垣間見えたのが少し残念でした。もう少し細かいところまで作り込めていれば、作品としてはもっと良かったと思います。


パンデミックという、すぐそこにある危機を描いた作品です。

2009.01.03

【番外編】DVD「ガンダム 第08MS小隊 5.1ch DVD-BOX」

 正月にDVDである作品をじっくり見ました。「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」の5.1ch DVD-BOXです。

 この作品は全11話+特別編1話で構成されています。実は私、10話まではビデオを借りて見ていたのですが、最終話と特別編はまだ見ていませんでした。つまり私の中では完結していない作品だったわけです。この正月は時間がたっぷりあったので、この機会に見てみようと思い立ちました。

 もともと賛否両論が多かった作品なので突っ込みどころは満載なのですが、搭乗するMSや兵器の格好良さというのはよく描けているし、他の作品に比べると戦場の雰囲気もよりリアルであることに異論はないでしょう。ストーリーはやっぱりいまいちだと思いますけど...。